媒介契約のポイント

不動産の売却を依頼する際に不動産会社と締結するのが媒介契約です。ここでは、媒介契約の種類と特徴、契約の内容について解説したいと思います。

1. 媒介契約とは?

媒介契約とは、不動産会社が売主様より宅地または建物の売買について媒介(仲介)の依頼を受けたときの契約です。

宅地建物取引業法第34条の2において媒介契約の内容については細かく規定されていますが、売主様から売却の依頼を受けた不動産会社は必ず媒介契約書を書面にて発行し、売主様と不動産会社の両方が記名押印しなければなりません

宅地建物取引業法第34条の2

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査(建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として国土交通省令で定めるもの(第三十七条第一項第二号の二において「建物の構造耐力上主要な部分等」という。)の状況の調査であつて、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するものをいう。第三十五条第一項第六号の二イにおいて同じ。)を実施する者のあつせんに関する事項
五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
七 報酬に関する事項
八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項

なお、媒介契約には以下の3つの契約形態があります。

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 一般媒介契約

(1) 専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、売主様が依頼をした不動産会社が探索してきた相手方以外の者と契約をすることを禁止する旨の特約を含んだ専任媒介契約です。この場合、売主様が自分で発見した相手方と取引することも禁止されます。

(2) 専任媒介契約

専任媒介契約は、売主様が依頼をした不動産会社以外の他業者に重ねて媒介の依頼をすることができない契約です。ただし、売主様が自分で発見してきた相手方と取引することは禁止されません。

(3) 一般媒介契約

一般媒介契約は、売主様が依頼をした不動産会社以外の他業者に重ねて媒介の依頼をすることができる契約で、当該他業者を明示する義務があるものと明示する義務がないものとの分かれます。

2. 媒介契約の種類と特徴

3つの媒介契約には、それぞれ特徴があります。以下の表にてそれぞれの取り決め事項等の違いをまとめました。

(1) 不動産流通機構とは?

流通機構とは、不動産物件の流通を素早く・円滑にするために、数多くの不動産業者が加盟してできた不動産情報ネットワークを運営する公益法人で、この不動産物件情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・システムのことをReal Estate Information Network System=REINS(レインズ)といいます。

要するに、一般のお客様が不動産を探す時に閲覧するアットホームやSUUMO等のポータルサイトの不動産業者バージョンと言えば分かりやすいかと思います。レインズを通じて、物件情報が他の不動産会社にも広く知れ渡ることになりますので、それだけ早期売却に繋がる可能性があるということです。

専属及び専任媒介契約では、このレインズへ物件情報を登録する義務がありますが、一般媒介契約では任意(不動産業者次第)となります。そのため、依頼する不動産会社によってはレインズへの登録を行わない(=他の不動産会社へ物件情報が伝わらない可能性がある)かもしれない、ということです。

(2) 自己発見取引とは?

不動産会社に購入希望者を探してもらうのが媒介契約の一環ですが、もし、売主様が自分で買主を見つけた場合はどうなるのでしょうか?

これは、どの媒介契約を締結しているかによって対応が変わります。

一般媒介及び専任媒介の場合、自己発見取引はOKなので、売主様が見つけた買主様と直接売買契約をすることが可能です。つまり、仲介会社(不動産会社)を介さず直接契約できますので、仲介手数料がかからないという大きなメリットがあります。

ただ、実際に自己発見取引を行う売主様は数少ないかと思います。不動産取引は専門的な知識が必要な場面も多く、また、不動産の特性上リスクやトラブルがつきもののため、安心して取引を進めるためにも不動産会社を介して取引を行うことを推奨いたします。

3. 媒介契約の内容

さて、ここからはさらに細かく媒介契約の内容について見ていきましょう。

まず、先ほどもご紹介した宅地建物取引業法第34条の2第1項では以下のように規定されています。

宅地建物取引業法第34条の2第1項

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

宅建業者(不動産会社)は、口頭で売買当事者から媒介の依頼を受けたら書面化する義務を負っているということなので、必ず媒介契約を書面で締結しましょう。

(1) 価格根拠の明示義務

不動産会社は、媒介契約に関する物件の価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません。つまり、事例に基づく周辺の相場、坪単価、同じマンション内の成約事例など合理的な根拠がない限りはアドバイスそのものをしてはいけないということです。

宅地建物取引業法第34条の2第2項

2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない

(2) 契約の有効期間と更新

売主様が他の宅建業者と契約ができない専属専任媒介契約、専任媒介契約の有効期間は、3か月を超えることができません。これより長い期間を定めたときは、その期間は3か月となります。また、有効期間の更新は、売主様の申出によってのみすることができ、自動更新などの特約は無効となります。

宅地建物取引業法第34条の2第3・4項

3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
4 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。

(3) 指定流通機構への登録

宅建業者は、専任媒介を締結したときは、契約の相手方を探索するため、専任媒介契約の締結の日から7日以内、専属専任媒介契約にあっては5日以内(いずれも休業日は算入しない)に、当該専任媒介契約の目的物である宅地または建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額等を、国土交通大臣が指定する者(指定流通機構)に登録しなければなりません。

宅地建物取引業法第34条の2第5項

5 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない

(4) 報告義務

専任媒介契約を締結した宅建業者は、売主様に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を2週間に1回以上(専属専任媒介契約にあたっては、1週間に1回以上)文書または電子メールにより報告をしなければなりません。

宅地建物取引業法第34条の2第9項

9 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。

(5) 特約事項

前述の内容に関して、専任媒介契約、専属専任媒介契約に対する規制に反する特約は、すべて無効となります。

宅地建物取引業法第34条の2第10項

10 第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。

(6) 媒介による報酬

宅建業者は、売買の媒介によって取引を成立させた場合は、当該媒介の依頼者(売主様)に対して報酬を請求することができます。報酬の上限額については宅建業法によって国土交通大臣の定めるところによるとされており、それに伴い国土交通省告示で決められています。なお、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介いずれの契約でも報酬額には差がありません。

売却にかかる諸費用

不動産の売却にかかる諸費用は多岐にわたります。どのような費用が必要かしっかり把握しておきましょう。

(7) 建物状況調査実施者のあっせんの有無

改正宅建業法により平成30年4月1日から媒介契約書にも「建物状況調査を実施する既存住宅状況調査技術者のあっせんの有無」について記載が義務付けられました。

4. まとめ

ここでは、媒介契約の種類と特徴や契約の内容について解説しました。

売主様が不動産会社に売却を依頼する媒介契約ですが、契約の有効期間、指定流通機構への登録、報告義務、報酬の額や支払い時期など細かな規定がなされています。また、ここで解説した事項の他にも、契約約款としてさらに細かな規定が記載されています。

以下に国土交通省の標準媒介契約約款の見本を掲載しますので、媒介契約の締結を考えている売主様は、ぜひお時間のあるときに一度目を通されてみてください。

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